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希少種移植作業
希少種が集中分布している地域として、里地里山が50%以上を占めています。また河川は流域(上流〜下流)や地形(瀬・淵・ワンドなど)、植生などの違いで多様な生態系を築いており、水中はもとより河川敷などに特有の希少種が生育しています。
しかし、現在は里山利用の減少や里地の人口過疎化・高齢化により、里地里山の荒廃が全国的に広がっています。河川においても、特に都市部での防災事業による流路の直線的な改修や護岸及び河川敷の安定化が進むことで、氾濫原を生育地とする希少種の生育環境が狭められています。農耕地においても、ほ場整備や再生可能エネルギーに伴う開発事業など、様々な整備・開発が進められています。
それら社会環境の変化や直接的な事業の実施によって希少種の自生地が狭められてしまうことから、移植や新たな生育場の創出などが求められています。
当社は「生物分類技能検定 植物2級」取得者を中心に、分布上あるいは生育環境上、希少種とされる種の保全の一方策として、これらの移植と新しい移植地での活着状況を判断するためのモニタリング調査を行っています。
希少種の保全・保護においては、まず希少種の種名、株数、生育状況、生育環境などと共に生理的・生態的特性を確認し、その対応方針(回避・最小化・修復・低減・代償)が検討されます。そして、“回避”以外の対応方針とした場合の一般的な対応手法として、“移植”があげられます。希少種の“移植”が決まれば、移植地の選定を行い、移植作業に取りかかります。
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重要なのは“移植地の選定”で、自生地と同等環境(日当り、土壌、水分、周辺植生など)の場所が望ましく、ニホンジカやイノシシによる食害対策も考える必要があります。
次に重要なのは“移植時期”です。樹木種であれば生長の止まっている冬季〜春季が良いとされますが、草本種においては対象種の確認時期(花期など)を逃すと同定が難しい種や地上部が枯れてしまう種など、個体確認が困難になる場合があります。
よって、確認適期に移植個体のマーキングを行い、移植適期に移植作業を実施するのが効率よく、確実であると考えます。注意すべきは、8月などの盛夏時期は移植作業中に移植株が乾燥する、蒸れるなどのダメージを受けやすく、植物に多大なストレスを与えることから、一般には避けるのが望ましいです。
当社はエビネ属をはじめ、チャセンシダ科、ユキノシタ科、キク科などの多年草の他、一年草の種子採取から発芽株の移植まで、様々な希少種の移植を実施しています。
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移植適期の例 |
確実に移植を図る上では、モニタリング調査の実施が重要になります。モニタリングは移植直後の植え込みダメージや競合する植物による生育阻害、動物による食害などの確認と管理を通して開花・結実から再生産までを確認していくことになります。
よって、モニタリングのタイミングとしては、移植直後の“成長期”とその後の“開花期”“結実期”、移植翌年の“芽生え期”“成長期”“開花期”“結実期”は重要であり、少なくとも移植後1〜3年は生長状況のモニタリングの実施が望まれます。
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